約束を破る

 
2022年2月9日 (水曜日)
 

約束を破る

 


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デンマンさん。。。、約束を破ったことを後悔しているのですか?


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僕は約束を破ることはめったにありません。。。

そうかしら?

なんだか小百合さんは奥歯に物が挟(はさ)まったような言い方をしますねぇ〜。。。

めったに約束を破ることがないと自認するデンマンさんが、どういうわけで約束を破ることを取り上げるのですか?

ちょっと次のリストを見てください。。。

 


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『拡大する』


『約束』

 

これはライブドアの僕の「徒然ブログ」の日本時間で1月26日の午前2時22分から午前5時41分までのアクセス者の記録です。。。赤枠で囲んだ箇所に注目して欲しい。。。

1月26日午前3時37分に フェースブックからやって来て 約束 を読んだネット市民がいたのですわねぇ〜。。。

そうです。。。

誰もがグッスリと眠る丑三つ時(うしみつどき)の午前3時ではありませんかァ!。。。真夜中にネットサーフィンする人がいるのですわねぇ〜。。。

でもねぇ〜、この記事を読んだネット市民が住んでいる場所は真夜中じゃないのですよ。。。

あらっ。。。海外からアクセスしたのですか?

そうです。。。実は、ダブリン市に住んでいる僕の「徒然ブログ」の常連さんのサリヴァン・相澤・由香里(あいざわ ゆかり)さんが読んだのですよ。。。

 


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ダブリンは日本時間より9時間遅れているので現地時間では前日、1月25日の午後6時37分ですよ。。。

由香里さんはダブリン市で何をしているのですか?

アイルランド人のジェームズ・サリヴァンさんと結婚してまだ1年も経ってないのです。。。現在、専業主婦で、ダブリンの生活をエンジョイしているところですよ。。。

 


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もしかして、由香里さんは昨日、2月8日の記事に出てきたネット市民と同一人物ではありませんか?

 


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『目玉焼き』

 

そうです。。。上の記事の中に出てきたダブリン市に住んでいるネット市民と同一人物ですよ。。。小百合さんも上の記事を読んだのですか?

読みましたわ。。。アイルランド料理が出てきたのでクリップを見て色々と参考になりましたわ。。。由香里さんは、現地時間で1月26日の午後3時半に『アイ、アイ、ツーアイズ』を読んでますよね。。。

そうです。。。由香里さんは前日、1月25日の午後6時37分、夕食の支度が終わったのでキッチンテーブルに座って iPhone で記事を読んだのですよ。。。

なんで、そんなことまでデンマンさんには分かるのですか?

上のリストに iPhone で記事を読んだことが記録に残ってます。。。時間的に夕食の料理が済んで一段落したところですよ。。。

。。。で、どういうわけで『約束』を読んだのですか?

由香里さんは、まだ結婚して1年が経った頃なのだけれど、ふと、ふるさとの家族や、友達、初恋の人などが懐かしく思い出されてきたのです。。。

それで『約束』を読んだのですか?

特に「約束」というタイトルに惹かれて読んだわけじゃないのです。。。とにかく、日本語で日本のことが書いてある記事が読みたかったのですよ。。。

それで、由香里さんは、望郷の念を慰めてくれるようなエピソードでも読んだのですか?

読みました。。。次のエピソードですよ。。。

 

小指

 


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「今日は、そんなものを着てゆくのか」
「はい」小間使の八重は、熨斗目麻裃(のしめあさがみしも)を取り出していた。
平三郎は、ぬうと立ったまま八重の手許(てもと)を見まもる、彼にはなぜ礼服を着てゆくかがわからない。
「なにか今日は、式日だったのか」
「いいえ、お式日ではございません」
八重は礼服をきちんと揃える、それを脇へ直して扇筺(おうぎばこ)を取る、蓋(ふた)を開けてやはり式用の白扇(はくせん)を取り出し、それを礼服の上へ載せる。
平三郎は八重のすばしこい手の動きを見ている。……少し寸の詰った、小さな、可愛い手である。

しかしその右手の小指の第二関節のところが、内側へ少し曲っているのが彼の眼を惹(ひ)く。
それは娘たちがなにか摘むときに小指だけ離して美しく曲げる、あの手の嬌態(きょうたい)ほどの曲り方である。

「その指はどうかしたのか」
「どれでございますか」
「その右手の小指さ」
「まあ」八重は慌てたように、片方の手でその指を隠す、「これは生れつきでございますの、いつぞや申し上げましたのに」
それから、揃(そろえ)た礼服をひき寄せる。

そこで平三郎はいま着たばかりの常着の、袴(はかま)の紐を解こうとした。
八重はおどろいて、それはそのままでよいこと、礼服は、挾箱(はさみばこ)へ入れて持ってゆくのだということを説明する。
「今日はお帰りに鹿島さまへお寄りなさるのですから、御下りのときこれをお召しあそばすのでございます」
「ああそうか」平三郎はにこっと笑う、「あれは今日だったのか」
「お袴はいけませんですよ」八重は若い主人を見上げて戒めるような微笑をみせる、「いつもとは違うのでございますからね」
そして膝ひざですり寄って、平三郎の袴の裾を揃そろえ、軽くとんと下へ引き、襞(ひだ)をなでてから、「さあ宜しゅうございます」といい、自分も礼服を抱えて立った。

父の新五兵衛は、もう先に出仕していた。
母親と家扶に送られて家を出た平三郎は、小馬場の西をまわってゆきながら、「袴はいけない」とつぶやく。
それから眼をあげて空を見る。
よく晴れた冬の朝で高い高い碧空(あおぞら)をなにかしらぬ鳥が渡っている、彼はゆっくりと御宝庫の向うにある自分の詰所へと歩いていった。

平三郎は、山瀬新五兵衛の一人息子である、父は川越藩秋元家の中老、彼は小姓組で書物番を勤めていた。
父も挙措のしずかな温厚一方の人で、かつて怒ったり暴(あら)い声を立てたりしたことはないが、平三郎も同じように極めておっとりした気質をもっていた。
唯一つ彼には放心癖があって、失敗というほどではないが時どき顔を赧(あか)くする場合がある。

(中略)

その日、平三郎はむすめを見にゆくことになっていた。
父の友人で阿部山城守の家臣に鹿島主税という人がある、その主税の仲だちで同じ阿部家中の芝方左内という者のむすめをどうかとすすめられていた。
身分も年恰好も相応なので、母親がまず乗り気になり、父も平三郎もかくべつ異存はなかった。
それで是非いちど当人を見に来るようにという先方の話から、訪ねてゆく約束ができたのであった。(略)

家へ帰ると母親が待ち兼ねていて、気遣わしげに、「どうでした」と訊いた。
「たいへん馳走になりました」平三郎はそう答えたきりである。なお女(なおじょ)は仕方なしにはっきり相手はどうだったのかと訊き返した。
「あなた見ておいでなのでしょう」
「ええ、お母さんという人をよく拝見して来ました」
「御当人はどうなすったんですか」
「もちろんいました、しかしこれはよく見ませんでしたよ」
「どうして御覧なさらなかったの、だってその娘さんを見にいらしったのでしょう」
「それはそうですが」平三郎はまじめに頷(うなず)いた、「しかしお母さんという人がたいそう善さそうな方なので、この人の娘ならよかろうと思ったものですから」

この言葉は母親の心をうったとみえ、なお女の眼がふっと潤みを帯びた、父の新五兵衛は温和な笑いを眼にうかべながら、
「だがおまえ、母親を娶(め)とるわけではないだろう、親が善(よ)いからといってその子が善いとは定きまっていないぞ」
「それはそうですが、しかし」彼は信じられぬというように父を見た、
「私は母上が好きですし、この母上があって私の今日があるのだと思いますから、それで大丈夫だと考えたのですがね」
「母上」と、新五兵衛は妻に笑いかけた、「なにか奢(おご)りますか」
なお女は微笑した。

泣かされた人のような微笑だった。それでそれをまぎらかすように、わざと事務的な調子でいった。
「それではあなたは来て頂いてもよいとお考えなのですね」
「いいと思います」
「鹿島がよろこぶだろう」新五兵衛は頷きながらそういった、「だいぶ熱心にすすめていたから、この家もにぎやかになっていい」
平三郎は、そんなものかしらという顔をしていた。

その明くる朝だった。出仕の支度をしているとき、小間使の八重が、「いよいよお定りになりましたそうで」と問いかけた。
平三郎はうんと頷いた。
八重の顔には若い主人の幸福をよろこぶ色があふれていた。
なにかでそのよろこびを表現したいようだった。
着替えの品を揃えたり、袴腰を当てたりしながら、つきあげるような眼で平三郎の姿を眺めつづけたが、やがて思い切ったように、「さぞお美しい方でございましょうね」といった。
そして、自分でもなぜかわからずに、さっと赧くなった。(略)

それから三日めの朝、やはり出仕の支度をしている時のことだった。
例のとおり八重が眼の前に跼んで、袴の襞を正し、とんと軽く下へ引く、その柔らかいちからを身に感じたとき、平三郎は夢から醒めたように、「ああこれはいけない」と呟(つぶや)いた、八重はふり仰いだ。
「いかがあそばしました」
「いけない、いけない」平三郎はなおそう呟いた、「これは失策をした」
「どうあそばしました、なにか……」
「迂濶(うかつ)だった、八重」そういって彼は、上から八重を見下ろした。「おまえがいたじゃないか、ここにおまえがいたじゃないか」
「わたしが、どうか致しましたのでしょうか」
「この平三郎の妻さ」
「…………」
「他から貰うことはなかった、平三郎の妻には八重がいちばんふさわしい、どうしてそれがわからなかったかふしぎだ、これも『袴』のうちだろうか」

八重は蒼白(そうはく)になった。
唇まで白くしわなわなと震えていた。
平三郎はその顔をびっくりしたような眼で見つづけながら、八重が五年というとしつき最も自分の身近にいたこと、朝な夕な着替えの世話や、持物の心配や、寝床の面倒や、その他の細ごました身のまわりすべての厄介をかけて来たこと、そしてそれはもう自分と切り離すことのできないほど、密接なつながりをもっていることなどを思いめぐらした。
「多少の困難はあるだろうが」と、彼は八重を見まもりながらいった。
「失策はとり戻さなければならない。今日、帰ってから父上にお願いをしよう、おまえもそのつもりでいてくれ、いいか」
そしてしずかに出ていった。
平三郎は八重を娶(めと)ることが容易であろうとは信じなかった。
しかしまた、それほど困難だとも考えなかった。

(中略)

「八重のほうはどうなのだ」
「それはわたくしから訊きましょう」
なお女がそういった、「あれにいなやはないでしょうけれど、でもそれは芝方さまのほうが済んでからで宜しいと存じますけれど……」
「八重には私が訊きます」平三郎はきっぱりそう云った、「今朝ちょっとそう申してありますし私から訊ねるほうがよいと思いますから、そして父上、これはやっぱり、なにより先にたしかめるべきことではないでしょうか」
「そう、万一ということがあるからな」
平三郎は立って廊下へ出た、母親は呼び止めようとしたが、彼の態度が余りきっぱりしているので声が出なかった。
彼は八重に声を掛けておいて、自分の居間へはいった、八重はすぐに来た。
しかし障子の外に手をついたまま、部屋の中へはいろうとしない。

平三郎はそのようすに不吉な予感を覚えた。
「今朝のことをいま両親に話したところだ、父上も母上も許して下さるようだが、おまえは承知して呉れるかどうか」
「お返辞は」と、八重は低い震え声で云った、「ここで申上げますのでしょうか」
「うん、いま聞きたいと思う」
八重は面をあげなかった、両手を敷居の上に置いて深く顔を伏せたまま、しかしかなりしっかりした口調で答えた。

「若旦那さまのおぼし召は、身に余る冥加(みょうが)でございますけれど、本当にもったいないほど有難うございますけれど、わたくし国のほうに約束をした者がございまして」そこまでいうと、八重の肩が見えるほど震えた、「わたくしの勝手で延び延びになっていたのですけれど、近いうちにはぜひともお暇を頂かなければならないことになっているのでございます」
「それは、いつ頃からの約束なんだ」
「こちらへ御奉公に上るとき、親たちの間で定ったのでございます」

平三郎は一種の胸苦しさを感じた。
二十五歳の今日まで、かつて知らない感情である、怒りでも不満でもなく、悲しいとか口惜しいというのでもない、なにか遁(のが)れみちのないところへ墜(お)ちこみ、大きな力で胸を圧迫されるような感じだった。
彼は、さがっていいといった、八重は消え入るような声で、「申しわけございません」といってしずかに去っていった。
それから母親がはいって来るまでのかなり長い時間、彼は身動きもせずに部屋の一隅をみつめていた。

(中略)

翌々年の秋の末、新五兵衛がとつぜん病歿(びょうぼつ)した。
高熱が数日続いたあとで、医者も死因の判断に迷ったほど急なことだった。
平三郎が跡を継ぐと、またひとしきり縁談が起った。
こんどは直に彼をとらえて説得する者もあったが、やはりどの話も具体的に纏まらず、「父の一年でも済ましたら」という挨拶で、みなひきさがるより他なかった。

こうして更に六年の月日がながれ去り、彼は三十三という年を迎えた、それまで我子のいうことに黙って同意していたなお女も、それ以上待つことに耐えられなくなったのだろう、「もう、そろそろ身を固めなくては……」ということを、改めていいだした。
「そうですね」平三郎もすなおに頷いた、「適当な者があったら貰ってもいいですね」
「本当にそう思ってお呉れですか」
「ええ本当です、但し私はもう見にゆくのはいやですよ」彼は笑いながらいった、「母上にお任せ致しますから、お気にいった者を貰ってください、こんどは変なことのないようにしたいですからね」
久方ぶりで、なお女も明るくなった。(略)

「七年忌の法会(ほうえ)でも済ませたら、はっきり定めることにしましょう」
なお女はそういって、楽しげに候補者をあれかこれかと選び悩んでいるようすだった。
法要は、川越にある菩提寺で行なわれた。
平三郎は寺からすぐ江戸へ帰ったが、なお女は親族の家に三日滞在し、秋深い武蔵野のそこ此処(ここ)を見物したうえ帰途についた。

それは薄ら陽の底冷えのする日だった。
城下町を出て、芒(すすき)や雑木林の続く道を暫(しばら)くいったとき、ふとその辺に小間使の八重の生家のあったことを思いだした、どんな風に暮らしているかしら。
あのとき憎がった気持はもう少しも残っていなかった。
寧(むし)ろ自分の可愛がってやった頃の彼女のおもかげが鮮やかに回想され、仕合せにやっているかどうか、もう子供も二人や三人はあろう、そう思うと会ってゆきたいという気持を激しくそそられた。
供の者に所を尋ねさせると、少しまわり道にはなるが遠くはなかった。
それでにわかに道を戻って訪ねていった。

家は、すぐにわかった。そこは三十軒ほどの部落の端にある、北側に櫟林(くぬぎばやし)をめぐらせた、南向きの、枯れて明るい桑畑を前にした陽当りのよい構えだった。
出迎えたのは四五たび江戸の家へ来たことのある、八重の兄に当る吾八という男だった。
彼は妹の旧主と知ると非常に慌てもし喜んで、ぜひ上って休息していって呉れるようにと懇願した。
しかしなお女は帰りを急ぐこと、八重に会いたくて立寄ったことなどを告げ、嫁いだ先はこの近くかどうかと訊いた。
吾八は却(かえ)って不審そうに、
「いいえ、八重はまだ家におります」といった。「お屋敷から下りました当時、ずいぶん縁談もあったのですが、どうしても嫁ぐと申しませんで、とうとうゆきそびれてしまいました」

「でもあのとき約束した人があると聞きましたがね、あれは破談にでもなったのですか」
「約束した者……」吾八は朴訥(ぼくとつ)そうな眼でなお女を見上げた、「いえ私はそんなことは存じませんです、この土地ではそんなことはございませんでしたが」
「だって八重が暇を取るとき」そういいかけて、なお女の顔に激しい動揺の色が現われた、そして改めて吾八を見た、「八重はいま此処(ここ)にいますか」
「はい、隠居所におります」吾八はいくらか自慢げにそういった、「あれから間もなく村の娘たちに読み書きや縫い物などを教えるようになりまして、まあ申してみれば寺小屋のまねごとのようなものを好きでやっております、これもお屋敷で御奉公したおかげでございますが」
「いまいるのですね」なお女じょは吾八の饒舌(じょうぜつ)をさえぎっていった、「その隠居所というのは、どちらからいったらいいのですか」
「私が御案内を致しましょう」
「いいえ独りでいきましょう、どこですか」
「その横を右へおいでになると、すぐこの西側でございますが」

なお女はもう歩きだしていた。
家の前を西へまわり、桑畑の畔を横へぬけると、若杉の袖垣の向うにその一棟があった。
なお女は縁先へ歩み寄った、まだ朝のことで、稽古に来ている者もなく、八重が独り、部屋の一隅で炉の火をたいていた。
八年という月日がなんと彼女を変らせたことだろう、どちらかというとまるく肥えていた体つきがすんなりとのびやかにひき緊り、眼鼻だちにも見違えるほどの品がついた。

たしかに、そしておそらくは人にものを教えるという生活の影響であろう、あの頃にはなかった寂(しずか)なおちついた品がついていた。
「……まあ」八重は縁先に近づいた人のけはいにふと眼をあげ、それがなお女だと知ると、よろこびの声をあげた。
「まあ奥さま」
そして縁先へ走り出て来たが、なお女の強く覓(みつ)める双眸(そうぼう)に気づくと、打たれでもしたようにはっと息をひき、額のあたりを蒼くした。
なお女はなにも云わずに暫くそのようすを見まもっていた。

それから八重が崩れるようにそこへ坐り、両手をついて深くうなだれると、まるで惹きつけられるように縁の上へあがった。
そして、八重の膝へつきかけるほども近ぢかと坐りながら、「八重」と呼びかけた。
「おまえ、なぜ……あのときどうして約束した者があるなどとおいいだった。聞かせてお呉れ、おまえは平三郎が嫌いだったの」
「もったいない」八重は激しく頭を振った。「もったいないことを仰しゃいます」
「ではなぜあんな偽りを云ったの、平三郎は縁談を断わってまで、おまえを望んだではないの、わたくし達が承知することもわかっていた筈ではないの、……あの子はまだ独り身でいるのですよ」
「申しわけございません奥さま」八重はひたと両手で面おもてを掩った、「おゆるし下さいまし」

なお女はじっと八重のすすり泣くさまを見ていた。
喉(のど)へせきあげる嗚咽(おえつ)の声も、ふるえおののく肩も、言葉以上のものを痛いほど明らさまに表白(ひょうはく)していた。
女でなければ理会しがたい心の秘密、女から女だけに通ずる微妙な心理、それがなお女と八重とをじかに結びつけるようだった。

「若旦那さまのお心も……」と、八重はむせびあげながらいった、「旦那さま、奥さまの思し召(おぼしめし)も、わたくしには身にあまるほどうれしゅうございました、あのお言葉だけでも、女と生れて来た甲斐があると存じました。お受け申すことができたら、そう考えますと、あんまり仕合せで、本当とは思えなかったくらいでございました、でも、お受け申してはならぬと気づきました、お受け申しては、御恩を仇で返すことになると存じました、もしゆくすえ若旦那さまのお名に瑕(きず)のつくようなことでもございましたら、死んでもお詫びはかなわぬと存じまして……」
「では、おまえも平三郎は嫌いではなかったのね、少しは好いておいでだったのね」
「……奥さま」
八重は耐え兼ねたように、声をあげて泣き伏した。
なお女は手を伸ばして八重の肩を押えた。
「八重、……おまえさぞ、苦しかったろうね」
そして、自分も片手で面を掩(おお)った。

その年の霜月の中旬に、平三郎は妻を娶(めと)った。同藩の田辺重左衛門の三女で、名は「八重」といった。
彼は母親からそう告げられたときも、祝言をしてからも、格別なにも気づかなかったようだ。
そして二十日ほど経ったある朝のこと、出仕の支度をしていたとき、脱ぎすてた衣服を畳んでいる妻の手許を見て、なにかひどく吃驚(びっくり)したように眼をみはった、急がしげに動いている妻の、右の小指が内側へ少し曲っているのである、彼は眼のさめたような気持で、妻の姿を眺めまわした。

それからもういちど右手の小指を見たが、やがてしずかに居間を出て、母親の部屋へはいっていった。
なお女は彼のために、出仕まえの茶を点(た)てていた。
彼はそこへいっていつもの席へ坐り、「母上、大きな『袴』でしたよ」といった。
そしてなお女がいぶかしげに眼をあげると、あの柔和な、明るい笑いかたでにこっと笑いながらいった、
「八重はあの八重だったのですね」


出典: 「日本婦道記 小指」
青空文庫より

 

身分違いにならないように、八重は同藩の田辺重左衛門の養女になって、平三郎に嫁いだのですわねぇ~。。。

そういうことですよ。。。自分が農家の出であることを八重は身分違いであると思い、恥じていたのですよ。。。。「なお女」の計(はか)らいで武士の養女になって嫁いだのしょう!

。。。で、デンマンさんは どうして上の話を長々と書き出したのですか?

嘘も方便とは昔の人が言ったのだけれど、八重は御恩を仇で返すことになる…、もしゆくすえ若旦那さまのお名に瑕(きず)のつくようなことでもございましたら、死んでもお詫びはかなわぬと思って、約束した者があると嘘をついたのですよ。。。

つまり、それはむしろ平三郎を愛すればこそ、彼のためと思って嘘をついたのですわねぇ~。。。

そういうことですよ。。。

。。。で、デンマンさんが かつて私にバンクーバーに行くことを勧めたくせに、今では私に日本にとどまれと言うのは、約束を破ったことになりますよねぇ~。。。

いや。。。約束を破ったことにはなりません。。。僕は、何度もメールに書きました。

 

小百合さんも思い出を大切にしながら、
子どもたちを宝だと思い
思い出を食べながら
楽しく、明るく、元気に暮らしてね。

小百合さんの幸せは、やっぱり家族と共にあるのですよ。エリンがおじいさんの約束を果たすためにパレスチナに出向いたのも、それは家族の幸せな絆があったからです。だから、小百合さんも家族を大切にしなければならない。。。僕は小百合さんの本当の幸せを願ったからですよ。。。

(小百合さんは何か言いたそうですが、無言のままです……。)


『約束』より
(2021年4月1日)

 

由香里さんは,上のエピソードを読んで、ふるさとの家族や、友達、初恋の人のことをしみじみと懐かしんだのですか?

そうです。。。

デンマンさんは、そう信じているようですけれど、それは建前(たてまえ)で、本音は「私との約束」を破ったことに「うしろめたさ」を感じており、この機会を利用して、「言い訳」のために、こうして また、くどくどと記事を書いたのでしょう!?

(デンマン、今度は無言です)


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【卑弥子の独り言】


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ですってぇ~。。。

あなたも、相手の幸せを願って約束を破ったことがござ〜ますかァ〜?

ええっ。。。? 「そんなことは どうでもいいから、何か他に面白い話をしろ!」

あなたは、そのような強い口調で あたくしに ご命令なさるのでござ〜♬〜ますかァ?

いけ好かないお方。。。

わかりましたわ。。。

では、デンマンさんが暮らしているバンクーバーに一度も行ったことがない人のためにバンクーバーを紹介するクリップを貼り出しますわ。

ジックリとご覧になってくださいませぇ〜♬〜。

 


(stanley50.jpg)


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世界で最も住みやすい街バンクーバー


(wetsuit.jpg)


(wetsuit3.jpg)


(gastown20.jpg)

 

ビデオを見ても、なんだかワクワクしてくるでしょう?

とにかく、明日もデンマンさんが興味深い記事を書くと思いますわ。

だから、あなたも、お暇なら、また読みに戻ってきてくださいまし。

じゃあねぇ~~。

 


(hand.gif)

メチャ面白い、


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